電報マニュアル

和文通話表とは?知って得する!聞き間違えやすい単語の伝え方

「和文通話表」という言葉を聞いたことがありますか?
メールやSNSなどがまだ誕生しておらず、離れたところにいる相手とのやり取りには無線電話を使うしか通信手段がなかった時代に、相手との通話をスムーズかつミスなく行うのに一役買っていたのが和文通話表です。「朝日の“あ”」「いろはの“い”」などといわれれば、「聞いたことがある」という人もいるでしょう。では、実際の和文通話表とはどのような内容なのでしょうか?
この記事では、日本語を伝達するために用いられた和文通話表に加え、アルファベット文字の伝達を助ける欧文通話表についてもご紹介します。

和文通話表とは?

和文通話表とは?そもそも和文通話表とは何でしょうか?和文通話表の用途や成立の背景、使用場面など、現代に受け継がれる和文通話表の基礎知識についてお伝えします。

和文通話表の豆知識

和文通話表は「フォネティックコード」とも呼ばれ、電話や電報、無線通信で情報を伝達する際に使用されます。文章や、聞き間違いやすい単語を伝える際に、雑音や歪みによって通話状態が良くない状況下でも、伝えたい内容を一言一句間違いなく伝達することを目的に制定されました。
例えば、「朝日」の「あ」というように、相手が想像しやすい代表的な物や地名などを挙げて、一字ずつ確認していくことで、誤った情報伝達を防ぎます。

成立の背景

和文通話表の歴史を紐解いてみましょう。和文通話表は、1950年(昭和25)に施行された電波法によって定められた「無線局運用規則」で制定されました。
主に、海上移動業務や航空移動業務などで、無線電話通信を行う際に使用されていました。特に固有名詞や数字、複雑な文字列の単語、そして四つ仮名(じ・ぢ・ず・づの4つの仮名)など、耳慣れない言葉や聞き間違えやすい文字を伝達する際に欠かせないものとして、重宝されてきました。

仮名文字を正しく伝える!和文通話表一覧

仮名文字を正しく伝える!和文通話表一覧実際の和文通話表を見てみましょう。知っていると、現代でも必ず役に立つときがあるはずです。

和文通話表一覧

・文字
「あ」:朝日の“あ”
「い」:いろはの“い”
「う」:上野の“う”
「え」:英語の“え”
「お」:大阪の“お”
「か」:為替の“か”
「き」:切手の“き”
「く」:クラブの“く”
「け」:景色の“け”
「こ」:子供の“こ”
「さ」:桜の“さ”
「し」:新聞の“し”
「す」:すずめの“す”
「せ」:世界の“せ”
「そ」:そろばんの“そ”
「た」:煙草の“た”
「ち」:千鳥(ちどり)の“ち”
「つ」:つるかめの“つ”
「て」:手紙の“て”
「と」:東京の“と”
「な」:名古屋の“な”
「に」:日本の“に”
「ぬ」:沼津の“ぬ”
「ね」:ねずみの“ね”
「の」:野原の“の”
「は」:はがきの“は”
「ひ」:飛行機の“ひ”
「ふ」:富士山の“ふ”
「へ」:平和の“へ”
「ほ」:保険の“ほ”
「ま」:マッチの“ま”
「み」:三笠の“み”
「む」:無線の“む”
「め」:明治の“め”
「も」:もみじの“も”
「や」:大和の“や”
「ゆ」:弓矢の“ゆ”
「よ」:吉野の“よ”
「ら」:ラジオの“ら”
「り」:りんごの“り”
「る」:留守居(るすい)の“る”
「れ」:れんげの“れ”
「ろ」:ローマの“ろ”
「わ」:わらびの“わ”
「ヰ」:ゐど(井戸)の“ヰ”
「ヱ」:かぎのある“ヱ”
「を」:尾張の“を”
「ん」:おしまいの“ん”
「゛」:濁点
「゜」:半濁点

・数字
「一」:数字のひと
「二」:数字のに
「三」:数字のさん
「四」:数字のよん
「五」:数字のご
「六」:数字のろく
「七」:数字のなな
「八」:数字のはち
「九」:数字のきゅう
「〇」:数字のまる

アルファベットはどう伝える?知って役立つ欧文通話表

アルファベットはどう伝える?知って役立つ欧文通話表和文通話表は日本独自のものですが、アルファベットの世界には、「欧文通話表」も存在します。欧文通話表の成立背景をふまえ、一覧を確認してみましょう。

欧文通話表の豆知識

欧文通話表とは、和文通話表と同様、無線通話などでアルファベット文字の組み合わせを正しく伝達するための国際的なルールです。通信に関わるさまざまな業種で使用されていて、それぞれに独自のルールや使用する言葉がありますが、ここでは世界的に使用頻度の高い「NATOフォネティックコード」をご紹介します。
NATOフォネティックコードは、1927年(昭和2)、無線通信に関する国際的な取り決めを行う国際電気通信連合(ITU)により制定され、使用時の問題点を反映しながら改訂を重ねてきました。現在使用されている欧文通話表は、1956年(昭和31)、国際民間交通機関(ICAO)により公表されたもので、ITUがすぐに採用し、軍隊、民間、アマチュア無線などで、広く使われるようになりました。

欧文通話表一覧

・アルファベット文字
「A」:Alfa(アルファ)
「B」:Bravo(ブラボー)
「C」:Charlie(チャーリー)
「D」:Delta(デルタ)
「E」:Echo(エコー)
「F」:Foxtrot(フォックストロット)
「G」:Golf(ゴルフ)
「H」:Hotel(ホテル)
「I」:India(インディア)
「J」:Juliett(ジュリエット)
「K」:Kilo(キロ)
「L」:Lima(リマ)
「M」:Mike(マイク)
「N」:November(ノベンバー)
「O」:Oscar(オスカー)
「P」:Papa(パパ)
「Q」:Quebec(ケベック)
「R」:Romeo(ロミオ)
「S」:Sierra(シエラ)
「T」:Tango(タンゴ)
「U」:Uniform(ユニフォーム)
「V」:Victor(ヴィクター)
「W」:Whiskey(ウイスキー)
「X」:X-Ray(エックスレイ)
「Y」:Yankee(ヤンキー)
「Z」:Zulu(ズールー)

いざというときに活用できる!和文通話表

いざというときに活用できる!和文通話表欧文通話表は、現代も原型に近い状態のまま使用され、日本でも総合無線技士、海上特殊無線技士、航空特殊無線技士などの試験で出題されています。
一方、和文通話表は電報発信時やコールセンターなどで一部使用されていますが、全体的に使用頻度は減少しています。理由として、有線・無線ともに、通信・通話する際の音声品質が格段に向上し、明瞭になったことが挙げられます。また、和文通話表は、成立当時に合った単語を使用しているため、現代ではとっつきにくい単語があることも、使用者減少の一因として挙げられるでしょう。
日常における使用頻度が減少している和文通話表ですが、電波状況の悪いときや、緊急時に活用できるかもしれません。いざというときに備え、知識の一つとして覚えてみてはいかがでしょうか。